電気主任技術者の人材不足課題と制度の見直しポイントとは? スマート保安キュービクルからみえる保安業務の将来像と懸念点

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発電所や変電所、製造工場などの事業用電気工作物の保安・監督を行うためには電気主任技術者が欠かせません。しかし近年では人材不足が課題となっており、従来から存在する2時間ルールなどの維持が厳しい状況となっています。そこで本記事では、人材不足が発生している背景と、課題解決に向けて行われているさまざまな見直しについて解説します。

電気主任技術者の人材不足課題とは

電気主任技術者とは、太陽光発電・風力発電などの発電所や変電所、製造業における工場などに設置されている事業用電気工作物の保安や監督を行う人のことです。現在、電気主任技術者の人口は減少傾向にあり、実際に、経済産業省が公表している資料によると2030年には第2種と第3種の電気主任技術者合わせて、2000人以上の人材不足が起きると予想されています。

電気主任技術者が不足している理由としては、以下3点が挙げられます。

 

・電気主任技術者が高年齢化していること
経済産業省が公表している資料によると、電気主任技術者の年齢構成のうち6割が50歳以上となっています。第3種の免状取得者は、再エネ設備や需要設備などの増加に伴う新規需要に伴い、将来的な人材不足の可能性が顕在化している状況です。

・電気主任技術者が難関資格であること
電気設備の管理は、電気主任技術者の資格を有していなければ行うことができない「独占業務」です。扱う電気工作物によって試験が異なるため、資格を取得すること自体のハードルが高くなっています。中でも最初にとるべきとされている第3種でさえ、その合格率は低い状況です。

・電気主任技術者の知名度が低いこと
経済産業省が公表している資料によると、電気主任技術者免状の認定校に対してアンケートを行ったところ、母数に対し約半分が電気主任技術者の資格について詳しく知らないと回答しています。つまり電気主任技術者自体の認知度が低く、仕事内容や社会的意義を含めた魅力の向上が必要だといえます。

出典:経済産業省「電気保安人材に係る制度見直しとスマート保安技術の導入促進について」

出典:経済産業省「電気保安体制を巡る現状と課題」

このような課題の解決策として、人材を増やすのではなく、少ない人材を有効的に活用する取り組みが求められています。例えば、IoTなどの先進技術を活用したスマート保安の活用や人材不足をカバーできる新たな統括制度形態での実施などです。

スマート保安については以下記事でご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。

内部リンク:経済産業省も推進する「スマート保安」とは?

次章では具体的に電気主任技術者制度にてどのような見直しが行われているのか解説します。

人材の有効活用に向けた「電気主任技術者制度の見直し」のポイント

人材活用に向けて、電気主任技術者制度の見直しが行われています。

以下では見直しの具体的な内容を解説します。

ポイント①:「2時間ルール」の見直し

統括電気主任技術者は電気工作物のもとへ2時間以内に到達できることが条件の1つとなっています。これは、何か問題が生じた際に駆けつけられるようにするためです。しかし、人材不足の問題がある現状にて、この条件の維持は厳しいため2時間ルールの見直しが行われています。

ポイント②:外部委託点検における月次・年次点検の見直し

現状は外部委託点検を第3種電気主任技術者が担っており、現場に赴いて外観点検を行い、設備ごとに異変が生じてないか確認していました。しかし、今後の人材不足が顕在化してくると保安レベルを維持できなくなる可能性があるため、見直しが行われています。

このような点で見直しが行われていますが、その他の解決策の一つとして、カメラやセンサーなどを設備に設置し、点検で必要な項目のデータを収集・蓄積するスマート保安が推進されています。スマート保安とは、経済産業省が推進する、AIやIoTなどの先進技術を用いて産業保安の安全性向上や効率化を推し進める取り組み・概念です。次章では、発電所から送られてくる高圧電力を施設で使える電圧に変換するための受電設備である、キュービクル式高圧受電設備、いわゆる「キュービクル」で推進されているスマート保安の活用を解説します。

スマート保安キュービクルの活用

従来の形態では、統括電気主任技術者が統括事業場に在籍するそれぞれの担当技術者に直接指示を出しており、主任技術者を中心とした2時間ルールになっていました。しかしカメラやガス・温度センサーなどを付けることができるスマート保安キュービクル(スマートキュービクル)を導入することで、主任技術者は遠隔での管理や精確な指示を行えるようになります。そのため、新たに設けた担当技術者の常勤場所を2時間ルールの中心とする形態が検討されています

また設備内にカメラやセンサーを設置してデータ収集するなどのスマート保安キュービクルの技術を活用することによって、保安管理業務の合理化と高度化も期待できます。これによって人材不足問題をカバーしつつ、保安レベルの維持も可能となります。

しかし、スマート保安キュービクルの技術を活用するだけでは補えない検査項目もあります。

次章ではその点において、どのような懸念点があるか解説します。

スマート保安キュービクルの懸念点

今までは電気工作物に第3種電気主任技術者が外部委託点検に赴いており、担当者の感覚で「異音・異臭・故障・汚染」などの異変が生じていないか確認していました。それをセンサーだけで完結させるのは難しいのが現状です。

実現するためには、カメラを設置して映像データを組み合わせた統合監視を行い、遠隔監視の保安レベルを高める必要があります。その反面、統合監視を実現するには、多くの機材の準備やシステムの構築に費用がかかってしまいます。また、導入・構築できたとしても、今までと同じ程度の保安レベルをカメラやセンサーにてしっかりと維持できるか適切に判断しなければなりません。

では今後、スマート保安キュービクルを導入するためには、どのような体制の構築が必要になるのでしょうか。次章では、スマート保安キュービクルの導入によって、電気主任技術者制度の見直しポイントを解決したい企業様に適したアムニモのサービスをご紹介します。

スマート保安キュービクル導入に適したアムニモのサービス

アムニモはスマート保安キュービクルの導入に適した映像ソリューションを提供しています。

前章でご紹介したように、統合監視を実現するには多くの機材の準備やシステムの構築費用がかかってしまいます。

一方でアムニモの映像ソリューションであれば、新たにスマート保安キュービクルに買い替えることなく、設備に後付けするだけでスマート保安キュービクルの利用が可能になり、コストを抑えることができます。

アムニモは、電気工作物に異常が生じた場合に熱が発生し易いという特性に基づき、サーマルカメラを用いた映像ソリューションを提供しています。

また、アムニモの映像ソリューションは、屋内・屋外問わず使える堅牢性に加え、数台~数万台への拡張にも対応可能です。さらに現地録画とクラウド映像管理をハイブリッドに使える運用性や、将来的にはAIによる映像解析にも移行できる発展性も備えています。既に風力発電施設での運用もされており、管理業務の効率化を実現しています。

アムニモの「エッジゲートウェイ AG10」という機器は、監視カメラの映像を取り込んでSSDに録画することが可能なLTEゲートウェイです。また、Ubuntu上に独自のアプリケーションを実装し、Ethernetやシリアルポート・DI/DOポートにて現地の機器からの情報の取込みや制御も行え、この1台で映像を用いた設備の遠隔監視が可能になります。クラウド上にデータを集めるため、様々な場所から監視をすることが可能であり、統括電気主任技術者の管理業務を効率化することができます。

以下では、電気設備点検に関連した「スマート保安」の課題解決についてご紹介しています。

スマート保安の映像監視とAIの導入については、以下資料をご覧ください。
 
 
アムニモの映像ソリューションについてご興味のある方は以下もぜひご覧ください。
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高い信頼性と運用性に優れた自社開発のIoTデバイスとクラウドサービスを組み合わせ、先進の映像・IoT・AIソリューションの提供を通じ、IoTとAIでつながる世界に貢献していきます。コラムにて定期的にお役立ち情報をお届けします。

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