電気設備点検とは?点検作業の課題とIoT化による解決策をご紹介

電気設備点検
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電気設備点検は、法律によって実施が義務となっている点検です。目視点検や電圧・電力測定などを行うこと設備保全を実現しますが、この点検にはさまざまな課題があります。そこで本記事では、電気設備点検の概要や課題とその解決策などをご紹介します。

電気設備点検とは?

電気設備点検とは、受電・配線といった設備の安全性を確認する作業のことです。この作業は電気事業法といった法律にて定められている点検であり、別名「電気保安点検」とも言います。

この点検の注意点として、対象設備の使用者または所有者は、保安業務の担当者・従事者に依頼して行う必要があります。また、点検の種類や行う頻度などは対象設備によって変化するため、確認・管理を行ったうえ、事前準備をしておく必要があります。

電気設備点検の目的と重要性

電気は、利用方法を間違えると漏電や感電、火災などにつながる恐れがあるため、定期的な点検が非常に重要です。そのため、法律では設置基準や技術基準といった各種基準も定められています。

なお、電気設備点検には、「法定点検」と「自主点検」の2つがあります。

  • 法定点検

その名の通り電気設備を安全・問題なく利用できるように法律で定められた点検であり、一般的には停電点検のことを意味します。また、保安規定に定められている各種試験や点検も法定試験の一種となります。

  • 自主点検

一方で自主点検は、事業用や自家用の電気工作物を所有している場合に行う必要がある点検であり、電気事業法第42条にて行うことが義務付けられています。ただし、点検の頻度や方法については、各事業者が保安規定を作成し、それに沿って実施する必要があります。

電気工作物の種類

  • 一般用電気工作物

事業所や一般住宅、さらには小規模店舗といった電気事業者より600V以下で受電している電気工作物のことです。具体的には、一般家庭・商店・小規模の事務所等の屋内配線、一般家庭用の太陽電池発電設備を指します。
電圧が低いため、保安時の規制は少なめとなっています。

  • 事業用電気工作物

上記の一般用電気工作物に当てはまらない電気工作物で、電力会社や工場といった需要設備を指します。具体的には、日本各地にある電力会社が住宅、店舗、施設、工場などで使用する電気を供給するために利用する大規模な発電所、蓄電所、変電所、送電線路、配電線路を指します。
電圧が高いこともあり、安全確保のためにも適切な措置が欠かせません。

  • 自家用電気工作物

事業用電気工作物のなかでも、600Vを超えて受電する電気工作物のことです。主に 、中小ビルやマンション等のキュービクルや屋内外配線を指します。

電気設備点検の種類

電気設備点検は、頻度やケースにより「月次点検」、「年次点検」、「臨時点検」、「電気事故対応」に分類されます。これらは、設備を維持するためもしくは異常を確認する重要な作業であるため、その違いを知っておきましょう。

月次点検

毎月1回、運転している電気工作物の配線や保安装置を目視にて点検する必要があります。電圧や電力測定により、過負荷が発生していないかなども確認します。

このような点検や測定を行い、電気を安全に使用できるかを判断します。

年次点検

毎年1回、設備を停電させることで、電気工作物に異常がないかを確認する点検です。機器の信頼性が高いといったケースでは、3年に1回以上の頻度となることもあります。

絶縁抵抗測定や機器内部の点検を行うほか、部分放電や温度なども測定し、関係する法律の基準を満たしているかも確認します。

臨時点検

臨時点検とは、月次・年次といった定期的な点検以外のことです。設備に異常があるときや、事故が予想されるときなどに、速やかに実施されます。

特に梅雨や降雪期、降灰期などは、異常が発生するリスクが高まるため、臨時点検を行い、電気工作物の状態の確認や事故の防止策の検討を行うことが大切です。

電気事故対応

電気事故対応とは、停電など、既に事故が起こったときに実施する点検のことです。詳細な状況を把握し・原因究明を行ったうえで、再発防止策を検討します。

電気事故は緊急性が高いケースが多いため、いざという時に速やかに対応できるよう事前に保安担当者を確保してことが必要になります。また、遠隔から装置の稼働データを取得することや監視カメラで設備の状態を撮影し映像を閲覧するなど、遠隔から現地の状態を把握できるようにすることは、限定された人員のなかで効率よく事故に対応するために有効な手段になります。

電気設備点検の課題解決策

従来の電気設備点検は、担当者が現場に直接行き、目視で確認するというアナログなものであった ため、昨今の人材不足・設備の増加に対応できずにいました。
しかし、現在では、設備の監視や月次点検を現地での対応ではなく遠隔からの対応を許容し、点検頻度の自由度を上げ、特に高度な保安技術を持つ事業者には、自主的な保安作業の範囲拡大を検討されています。
また、主任技術者の配置に関する義務を緩和することなどの規制の見直しが検討されており、一部は既に規制緩和が実施されています。
具体的には、1人の統括電気主任技術者(第2種電気主任技術者)による指揮監督の下、担当技術者を配置し、同技術者が2時間以内に電気工作物の設置場所へ到達できる形態も許容されることを指します。
その際、保安水準を確保するための措置として、電気工作物の設置場所や運転状況を確実に把握するためのスマート保安技術等をあわせて講じることが必要です。

外部リンク:経済産業省「電気保安規制の見直しの方向性について」

そのような政策の動きがあることで、それに連動する形でITやIoTなどを活用した点検の遠隔監視や自動化が広まりつつあります

 

点検のIoT化により、自動化に加え、現場の省人化、管理業務の負荷軽減につながります。また点検の情報やノウハウが蓄積されていくため、業務の質向上や正確なデータ分析によるトラブルの早期発見にも役立つと考えられます。

以下では、電気設備点検に関連した「スマート保安」の課題解決について紹介しています。

電気設備点検における課題

電気設備点検を行っている企業では、さまざまな課題を抱えています。以降では具体的な課題をご紹介しています。

① 人手不足

近年では、現場作業員に加え、これらの電気設備点検を行う際に必要な電気主任技術者の資格保有者などといった電気設備に関連する人材は減少傾向にあります。人材の高齢化も進んでおり、将来的な人材不足が予想される状況です。また、保守点検業務は、作業員の経験やノウハウにも依存していることから、新しい人材も育ちにくい課題もあります。
そのため、今後はさらにスキルをもった人材が少なくなり、品質低下が起こる恐れがあります。
なお、従来の作業は、巡回や従業員による作業に負荷がかかり、人的ミスが発生しやすい環境ややり方であることは否めません。また、例えば、突然の災害による事故により、設備の監視のため遠隔から取得していた稼働データを リアルタイムに把握できなくなることで、異常が発覚した際にすぐに対応できなくなる点も課題といえるでしょう。

② 再生可能エネルギー発電設備の急増と事故の増加

FIT制度※1が導入されてから、太陽電池発電の約98%、風力発電の約91%が小出力発電設備となり、再生可能エネルギー発電設備数は急速に増加しています。
また、COP-26での「グラスゴー気候合意」の1つとして、石炭火力発電をフェーズダウン(段階的に削減)することが採用されたため、その動きが加速しています。

設備数が増えている一方で、太陽電池発電については、事故件数・事故率ともに高い傾向があるため、安全確保に対する社会的要請も高まっています。

このように、再生可能エネルギー発電設備の主力電源化に向け、安全確保が差し迫っている課題だといえます。

※1 FIT制度(固定価格買取制度):再生可能エネルギーにて発電された電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取れることを国が認めた制度のこと

発電所や変電所、送配電線路のような、高圧または特別高圧の需要設備が該当します。

 

参考:経済産業省 産業保安グループ 電力安全課「電気保安制度をめぐる現状と課題(令和2年7月10日)」

電気設備点検のお悩みはアムニモにご相談を!

点検業務のIoT化を行う方法として、映像による遠隔監視システムの導入が挙げられます。

遠隔監視システムの導入により、故障に対する対応の優先順位付けや、必要な部品・器具の調達を現場に人を派遣する前に行えるため、効率的な復旧作業を実現できます。故障による停止時間を短縮することで、稼働率が上がり、収益性の向上にもつながります。

アムニモ株式会社では、アナログな点検作業をIoT化するサービス・ノウハウを提供しています。具体的には、インフラ設備や工場内機器の定期点検や状態監視を、カメラの映像データとセンサー類・PLC等のデータを統合的に監視する映像ソリューションを提供しています。多拠点、あるいは1ヶ所でも広大な敷地内に数多く設置された機器や設備の点検に際し、各所に分散した映像やセンサーデータをスマートに監視する仕組みを、既存の設備の大規模な刷新ではなく後付けでスモールスタートできる点も魅力のソリューションです。このような、メンテナンスを効率化するアムニモの映像ソリューションについては、以下をご覧ください。

 
また、特に電気保安への映像監視とAIの導入に関しては以下のホワイトペーパーで詳しくご紹介しています。
アムニモサイト運営事務局
アムニモ株式会社は、横河電機のグループ会社です。
高い信頼性と運用性に優れた自社開発のIoTデバイスとクラウドサービスを組み合わせ、先進の映像・IoT・AIソリューションの提供を通じ、IoTとAIでつながる世界に貢献していきます。コラムにて定期的にお役立ち情報をお届けします。

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