経済産業省も推進する「スマート保安」とは?

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スマート保安とは、経済産業省のリードの元で実現に向けて推進されているIoT等の先進技術を活用したスマートな保安体制・方法を表すコンセプトです。2020年6月には経済産業省が主宰する『スマート保安官民協議会』が発足し、同年6月29日に開催された第1回の会合では『スマート保安推進のための基本方針』が承認され、公表されました。

本記事では、スマート保安の定義とスマート保安がどのような分野で必要とされているのか、また具体的にはどのような動きが広がっているのかについて、解説いたします。

スマート保安とは?

スマート保安とは、経済産業省のリードの元で実現に向けて推進されているIoT等の先進技術を活用した、より効率的で安全性の高いスマートな保安体制・方法を表すコンセプトのことです。具体的には石油・化学や電力・ガス等の産業・エネルギー関連インフラの分野が対象になっています。検討の背景としては、設備の高経年化、人材の高齢化とその長期的な不足、技術・技能伝承力の低下に加え、災害の激甚化やテロリスク、新技術によるデジタル社会の進展など、構造的な課題や様々な環境変化への対応が求められているという点が挙げられています。

経済産業省は、2017年4月に『スマート保安先行事例集』を公表し、産業・インフラ系の事業者においてIoTなどの手法により取得したデータを生かした保守・保全の効率化の事例を紹介しました。

『スマート保安官民協議会』とは?

スマート保安への期待を背景に、2020年6月には経済産業省が主宰する『スマート保安官民協議会』が発足し、同年6月29日に開催された第1回の会合では『スマート保安推進のための基本方針』が承認され、公表されました。また『スマート保安官民協議会』では高圧ガス保安部会、ガス安全部会、電力安全部会の3つの部会を設置して、具体的な事業セグメント毎にIoT等の新技術を用いた、より効率的で安全性の高い保安方法の将来像を検討し、規制緩和などの施策を並行して実施していくこととなりました。

一例として高圧ガス関連のプラントについては2017年に規制緩和が実施され、従来は3年ごとに設備の停止を伴った点検を行なうことを義務付けていた制度を改革し、高度な保守能力を持った事業者であれば8年間連続で稼働することが可能となりました。

電力分野におけるスマート保安の推進

スマート保安が強く推進されている分野の一つが「電力」です。『スマート保安官民協議会』の電力安全部会は2020年7月以降継続的に会合を実施しており、経済産業省も電力関連の保安に関する規制緩和を進めています。

『電気保安分野 スマート保安に関するアクションプラン』

2021年4月に、『スマート保安官民協議会』の電力安全部会は『電気保安分野 スマート保安に関するアクションプラン』を発表しました。同アクションプランでは、電気保安の現状について、下記のような課題を指摘しています。

  • 保安作業者の高齢化や新規入職者の減少による人材不足
  • 需要設備の高経年化
  • 自然災害の甚大化による再エネ発電設備の事故の増加
  • 新型コロナにより保安業務の継続がより困難

同アクションプランでは、新技術の導入によりこれらの課題を克服することを目指すとしています。具体的に挙げられた技術分野の重点項目としては、

①各種センサーや監視カメラとIoT技術を利用した遠隔監視化・常時監視化の推進
②ドローン等を用いた高所やアクセス困難設備の映像による保守保安の推進
③AI等によるデータ解析を用いた予兆診断・予防保全の推進

などが挙げられています。

「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」の制定

経済産業省は電力関連の保安に関する規制緩和の一環として2021年3月に「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」を制定し、太陽光発電の分電盤等の一部の例外を除いて、電力関連の機器・設備の月例の点検を遠隔で実施することを許容することを表明し、点検にかかわる人員の削減を可能とする規制緩和を行ないました。このような規制緩和は過去に他の業界でも起こっており、たとえば1990年代に実施されたエレベータの定期点検に関する規制緩和では、それまで技術者の派遣が必須となっていたエレベータの定期点検について通信を用いた遠隔診断を適用できることとした結果、IoT(当時はM2Mと呼んでいた)を用いたエレベータの遠隔監視が一気に普及したという実例があります。電力業界においても、この規制緩和を契機としてIoTによる遠隔監視・スマート保安が急速に普及することが期待されています。

まとめ

このように経済産業省は、民間企業へのアクションプランの提示と積極的な規制緩和によって電力保安業界に対してIoTや映像を用いた遠隔監視、AIを用いたデータ解析などの導入によりスマート保安を推進するように働きかけています。そのため、今後この分野への各企業の投資が増大していくことが期待されています。

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