車両ナンバープレート認識システムとは?
人工知能(AI)が私たちの暮らしをどのように変えていくのか?今回のテーマは、ディープラーニング(深層学習)の技術を活用した、「車のナンバープレート認識」です。車のディーラーで、来店すると同時に、「〇〇様。いらっしゃいませ」と言われてびっくりしたことはありませんか?実は駐車場の入口に車両のナンバープレートを読み取るネットワークカメラが設置されていて、撮影された車番とお客様情報がリンクし、それによってセールスマンはお客様ごとの対応が可能になっているのです。ナンバープレート認識は、駐車場の入出場管理や、交通量のモニタリング、不審車両や盗難車の監視など、幅広く利用されています。この記事では、ナンバープレート認識の概要、データ処理の流れ、課題と対策、導入事例や技術まで詳しく解説いたします。
ナンバープレート認識の概要、データ処理の流れ
ナンバープレート認識は、まずナンバープレートを含む車両の画像からナンバープレート領域の部分のみを読み取り、その後ナンバープレート領域の画像から文字となる部分を切り出す処理を行います。そして、各文字の領域に対して、文字認識を行うことで車両を特定できるようになります。また、顧客管理のシステムと連携し、認識結果を読み込むことで、顧客情報をシステムに表示することも可能となります。
導入にあたっての注意点
ナンバープレート認識は、ナンバープレートだけで個人を特定するソリューションのため、その精度には高い性能が求められます。屋外での利用が前提となるので、カメラ設置場所の調整、画像内のナンバープレートや文字の大きさの事前確認、コントラストの高い画像を取得できるように照明条件を工夫することが必要です。しかし夜間や雨の日などは、照度が極端に不足することや、街灯などの照明の反射によるハレーションなどによって、認識の精度が極端に下がってしまうことがあります。また、直射日光が当たる状況下や、逆光といった撮影条件、ナンバープレートの汚れ等も精度低下の原因の一つとなっています。
ナンバープレート認識システムを選ぶポイント
高速反応と精度の高い認識率
急角度での進入車両も認識できる、高性能な認識エンジンを使用していれば、認識率は限りなく100%に近くなります。またナンバープレートの大きさが異なる大型トラックやバス、図柄やアルファベットが含まれるナンバーにも対応していること、そして高速に画像を認識できることなども大切です。
走行中の車両で認識できること
利用シーンに応じて、時速は最大で何キロまで認識可能かを確認しておく必要があります。
夕暮れ・夜間でも認識可能か?
赤外線投光器が一体となっていれば、夜間などの暗い環境でも、高精度でナンバー認識を実現できます。
どのようなケースで利用できるの?
車両ナンバープレート認識が実際に活用される利用シーンについて、いくつかご紹介します。導入を検討する際には、是非参考にしてください。
駐車場の入出場手続きの自動化
ナンバープレートを自動検知し記録するシステムで、入場および退場の時間を短縮し、ゲート前の渋滞を緩和します。車がゲートを通過すると同時に、ナンバープレートを撮影します。管理センターでは車両ナンバーの情報がサーバーに入力され、事前精算機にその内容が送信されます。ドライバーが事前精算して出庫すると、一連の流れによって、自動的にゲートが開く仕組みになっています。現時点での入庫台数と出庫台数を、過去のデータと比較することもできます。
なお最近では、「スマートパーク」という、出入り口のゲートも駐車券も無い、新しい方式の有料駐車場も登場しています。スマートパークでは、車両のナンバープレートを駐車場内のカメラで撮影して、そのデータをもとに、利用状況を管理しています。駐車料金の精算は店舗の出入り口に設置された精算機で行ないます。この精算機に自分の車のナンバープレートを入力して、料金を支払い出庫する方針となっています。このスマートパークは料金支払いが自己申告なので、精算せずに出庫することもできてしまいます。ただし、精算せずに出庫した場合は、次回利用時に、前回の未払い分を支払うようなシステム設計となっています。悪質なドライバーの場合、その車両ナンバーを登録し、次回利用時に店舗側にメールで通知する仕組みとなっています。また、万引き常習犯などの要注意人物の対象車両は、こちらも同様に店舗側にメールが通知されます。実際に、このスマートパークを採用した店舗の事例では、万引き点数が20%近く減少した実績もあるそうです。
工場や物流センターの入場車両の記録及び監視
ゲート通過時の車両入出庫管理、守衛業務の効率化などのセキュリティ用途や、受付渋滞の解消などを目的に、工場や工事の現場などで導入されています。場内への出入り口で車番を認識することで、入退場履歴の自動記録や指定の業者管理もスムーズに実施することができます。入り口でのチェック強化や、ゲート併用で不正な車両侵入を防止するなど、警備体制を強化することができます。もしもの際には、日付、時間、登録の有無、車両の番号などで検索し、防犯に役立てることができます。
車両ナンバーと顧客情報をリンクして顧客サービスを向上
車両ナンバーと顧客情報をリンクし、来店時に顧客ごとに最適なサービスを提供することが可能となります。顧客とのエンゲージメント強化、新規顧客の獲得にも役立ちます。顧客データと車両ナンバーをリアルタイムでマッチさせ、該当車両の顧客データを表示し、場合によっては、パトライトと連動して、お客様担当者に事前に通知するという運用も可能になり、顧客満足度の向上に大きく寄与することができます。
交通量調査を効率化
高速道路や一般道における渋滞の解消や、店舗出店の際のマーケティング活動などを目的に実施されています。速度の速い状態で走っている各種車両の映像をAIで解析し、交通量の計測、集計、車両タイプごと、事業/自家用種別などの詳細な分析が容易に行えます。そのため、今までの長時間の人手による計測が必要なくなり、調査業務の大幅効率化を実現することができます。
まとめ
以上、本記事では、ナンバープレート認識のデータ処理の流れ、課題と対策、導入例や技術をご説明させていただきました。ディープラーニングの急速な進歩によって、様々な分野への実用化が進んでいます。AIは日常生活やものづくり、教育など社会のあらゆるところに変化をもたらします。これからの社会のより良い姿を構想するきっかけにしてみてください。
アムニモのナンバープレート認識に対する取り組み
ナンバープレート認識の実証実験を実施
アムニモでは社内でナンバープレート認識の実証実験を下記のような仕組みで実施しました。
①IPカメラで撮影した映像データを、エッジゲートウェイ内に搭載された“ビデオマネジメントシステム(VMS)”経由で、“ナンバープレート認識エンジン”に入力
②認識結果はVMS上で確認
・いつどのカメラでナンバープレート認識が行われたかを直感的に確認可能
・VMSの各種フィルタ機能も利用可
③さらにアムニモ cloud上でも認識結果を確認可能(Web API経由でデータ連携)
AIチップ搭載ゲートウェイの開発
アムニモでは、発売中のエッジゲートウェイの派生製品として、“AIエッジゲートウェイ”を開発しています。主な特長としては、以下となっています。
- 機器の本体内に、AI処理専用プロセッサが内蔵され「エッジAI」を実現可能
- エッジゲートウェイ同様に、VMS(ビデオマネジメントシステム)、DMS(デバイス管理システム)が搭載され、連携可能
- 一般的なAIモデルである「ONNX」に対応
- AI処理実行時の消費電力や発熱を抑える工夫
(参考)システム構築に使用される技術の一例
ナンバープレート認識のシステムを構成するにあたって、信頼度に加え、使い慣れているライブラリを選定することが大事です。信頼ある言語は定期的なアップデートや、トラブル時のサポートもしっかりとされています。その技術の一例を紹介いたします。
- 物体検出を行うためのフレームワークである「TensorFlow Objective Detection API」を利用し、ナンバープレートの領域検出
- 物体検出アルゴリズムは、SSD(Single Shot Detection)、ニューラルネットワークはInception v2
- 文字認識は、CRNN(Convolutional Recurrent Neural Network)
- ナンバープレートの画像を合成するPythonスクリプトを作成して、多くの教師データを確保
高い信頼性と運用性に優れた自社開発のIoTデバイスとクラウドサービスを組み合わせ、先進の映像・IoT・AIソリューションの提供を通じ、IoTとAIでつながる世界に貢献していきます。コラムにて定期的にお役立ち情報をお届けします。