自治体

AIを活用した人流計測でまち全体の活性化へ

設置許可が取りやすく、スピーディーな導入に役立ちました

— 高山市 デジタル推進担当監 山田雅彦様 —
業界
自治体
製品
IoTルーター(屋外版)
使用用途
「観光まちづくり」を目的としたAIを活用した人流計測
課題
  • 設置が屋外、特に河川敷の場合には設置許可の取得に苦労。
  • LANケーブルの敷設には敷設許可の取得や工事に時間がかかる。
導入の効果
  • 柱にくくりつけられるコンパクトな装置で設置の許可が取りやすい。
  • 無線化された装置であるため設置機材がコンパクトになり簡単。
  • 直射日光や寒冷地への対策もされている屋外専用機で安心。

概要:AI顔認識システムによる観光客の動向分析でまち全体の活性化へ

岐阜県北部に位置する高山市は観光都市としても有名です。飛騨山脈や白川郷などの観光地への玄関口となるほか、市内中心部にも江戸時代以来の伝統的な町並があり、国内外から多くの観光客が訪れています。

そんな高山市では現在、人流計測にカメラやAIを活用することで、観光施策の効果検証や改善活動に力を入れています。現在、高山市が着目しているのは、観光客の方々にいかに回遊性をもって様々な場所を訪れてもらい、まち全体の活性化につなげられるか、という観点です。「古い町並」が最も有名な観光地のひとつですが、その他の魅力的な観光地や商店街にも、より多くの観光客を呼び込むことでまち全体の賑わいにつなげていきたいと考えています。

そのためには、そもそもどの場所にどれくらいの人数が訪れているのか、人が多い時間帯や時期、さらには性別や年代などの属性情報も知ることが重要です。このような情報を収集することで初めて、様々な施策により人を呼び込むことができているのか、さらに改善していくためにはどのような施策が有効かを検討できます。

人流の計測については、元々年に1回、商店街の5箇所において、人が目視計測する形で通行量を測っていました。しかし、1年のうちわずか2日間、かつ10時から17時(昼の1時間をのぞく)の限られた時間のデータであり、比較・分析には十分とはいえなかったため、人流計測としてカメラやAIの活用も進めることとしました。これまでに、市内の5箇所に人流計測・属性分析のためのカメラを設置し、通行量と人物の属性などをAIが判断しています。

アムニモ製品の役割:屋外での人流計測においてカメラ映像と分析データを送信

新しい橋の人流計測に利用

今回、アムニモのIoTルーターが設置されたのは、飛騨高山宮川朝市という屋外の市場です。朝市は、午前中に野菜や果物、漬物、土産品などを販売する市場で、高山市の観光名所の1つとなっています。

高山市では、まち歩きの楽しさを高めるための利便性や回遊性の向上、滞在時間の延長などを図り、「観光まちづくり」の視点に立った取り組みを進めることが課題となっています。

そこで、市では、多くの観光客が訪れる古い町並(下図 国道158号線以南)から朝市や商店街などの周辺エリア(下図 国道158号線以北)に、人の流れを「誘引」し、誘引した人を「滞留」させ、滞留した人を商店街などの周辺エリアに「誘導」するため、令和2年に「行神橋」、令和4年に「飛騨高山にぎわい交流館 大政」を供用開始し、併せてその効果検証のため人流計測カメラを設置することとしました。

IoTルーター(屋外版)の役割:PoE給電・データ送信・屋外でも安定稼働

今回、人流計測に用いたのはNECソリューションイノベータ株式会社の人物像分析システム「Field Analyst」です。本システムは、映像データをAIが分析し、人の入退場(人物カウント)、時刻、人物の性別・年齢等の情報を取得できるシステムです。今回の事例では、本AIソフトはIPカメラ上で動作しています。アムニモのIoTルーターは、そのIPカメラへのPoE給電を行い、さらに映像データとAI処理結果をモバイル通信で送信する役割を果たします。そして、送信されたデータは、お客様のPC等で閲覧できるようになります。

また、アムニモのIoTルーターのもう一つの大きな役割は「屋外でも安定稼働」することです。真夏には35度を超え、直射日光があたる場所である一方、冬にはマイナス10度を下回る寒冷地でもあります。そのため広い動作温度範囲や、瞬停・雷対策などが施された、屋外でも安定稼働する製品であることもポイントでした。

※「カメラへのPoE給電」「映像データと処理結果を無線で送信する」「屋外でも安定稼働」の3つがアムニモ製品の主な役割

導入の効果:設置許可や設置作業の簡略化によるスピーディーな導入

1.無線対応で設置が簡単

当初は、付近の高山市所有の交流館からLANケーブルを敷設して、カメラへPoE給電を行う手法を考えていました。しかし、河川をまたいでLANケーブルを敷設するためには、県に対し河川占有許可の申請が必要だと分かりました。この申請には、登記簿の取得や工事用図面・設計図面の作成等が必要な上、許可の取得に1~2か月かかることもあるそうです。速やかに計測する必要があったことから、モバイル通信でカメラの映像データを送信できるアムニモの製品、IoTルーター(屋外版)をNECソリューションイノベータ株式会社様から紹介いただきました。本製品であれば、LANケーブルの敷設工事が不要となり、設置工事はもちろん、申請や許可取得の手間も省くことができました。特に、夏休みの行楽シーズンのbefore/afterで比較するため、夏休み前の設置を目指し急いで準備を進めており、スピーディーな導入ができたことに大変満足しています。

2.コンパクトで設置許可がとりやすい

アムニモの製品はコンパクトな設計で、設置のためのスペースを気にせず導入できました。自治体がシステムを展開する上で最も大変なことの一つが景観に配慮したものでの施工や、地元関係者の方への事業主旨説明です。設置工事等は工事業者に任せることもありますが、アムニモのIoTルーターは高山市所有の街路灯に括り付けられるコンパクトな大きさで、職員でも取り付けることができたため、設置のための下準備や設置に要する時間を最小化することができました。

3.オールインワンの屋外専用装置

さらに、「IoTルーターとカメラがあれば十分というのが大変魅力です。」と話すのは、アムニモ製品の導入に携わったNECソリューションイノベータ株式会社の吉田様です。「従来のカメラシステムでは、カメラとパソコン、PoEスイッチやインターネットルーターが必要で、これらを屋外に設置するとなるとさらに屋外専用の箱も必要です。これらが一つになっていて、かつ直射日光や瞬停・雷への対策も施された屋外専用機として用意されており、大変便利に感じています。」

今後の展望:データをいかに具体的な施策につなげていくか

今後の展望としては、人流の増減や属性等の集めたデータを分析・活用し、具体的な施策として落とし込み、効果的なまちづくりに力をいれていきたいと考えています。

例えば、商店街の方のお話を聞く中で見えてきたのは、「2週間先の人流予測」をしてほしいという要望です。2週間後の土日に人流が多くなりそうだ、などの情報が事前に分かれば、シフトの適正配置や仕入れ量の調整等の対応ができます。また、このような人流予測のデータは住民の方だけでなく、観光客の方にも役立つ情報です。混雑する時間帯を避け、より効率的に多くの観光地を回っていただき、結果としてまち全体の活性化へつなげたいと考えています。

また、今回の設置カメラ付近にある橋については、橋を渡らずに引き返す方が一定程度いらっしゃいます。そのため、橋を渡ってもらう動機の一つとして、橋の先に「飛騨高山にぎわい交流館 大政」を新設しました。こちらでライブなどのイベントを行い、橋の反対側からでも「何か楽しそうなことをやっている」と興味を持っていただき、実際人流が増えたケースもありました。

このように、データを活用した施策とその効果検証というサイクルをしっかり推進することで、まち全体の活性化を実現したいと考えています。

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