太陽光余剰電力の効率運用システム
“カスタムアプリケーションを柔軟にインストール可能な
高い汎用性が最大の決め手”
- 課題
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- ルーターとサーバーをそれぞれ調達すると単価が高く、品質も下がってしまう
- 屋外設置のため、-20~60℃までと低温と高温のどちらにも対応できるデバイスがなかなか見つからない
- 導入の効果
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- LTEのルーター機能とサーバー機能を1台で実現し、低コスト・高品質なシステムを実現
- 高い汎用性と拡張性を有する機器でカスタムアプリケーションを実装
- 幅広い動作温度に対応するため、屋外に設置可能
概要
株式会社アイ・グリッド・ソリューションズは、仮想発電所(VPP)事業、エネルギーマネジメント事業、電力供給事業を通した脱炭素ソリューションを統合的に展開するエネルギーサービスプロバイダーです。電力使用量の見える化や電気使用量の予測モデルなどのこれまでの知見を活かし、この度「発電量予測」の技術を組み合わせることで「余剰電力の予測モデル」を実現し、「R.E.A.L. New Energy Platform®」を新しくリリースしました。
「R.E.A.L. New Energy Platform®」は、AIによる高精度の余剰電力予測とDER(Distributed Energy Resources:分散型エネルギーリソース)の、きめ細かい自動制御が可能なエネルギーマネジメントプラットフォームです。近年、小売店などのスーパーや企業の営業所など、事業者が自社で利用するために太陽光パネルを設置するケースが増えています。しかし、電力供給が不安定な太陽光発電では、予期せぬ余剰電力の発生や電力不足に苦労することも多いです。このような課題を解決するため、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズは、電力の需給バランスをAIが予測し、最適な発電・放電の制御を行うR.E.A.L. New Energy Platform®を提供しています。
R.E.A.L. New Energy Platform®は、事業所に設置した発電設備や蓄電池と系統電力、さらに事業所が使用するEV車両(スーパーであれば配送車など)の充放電なども統合的に管理して、電力利用の最適化を実現します。R.E.A.L. New Energy Platform®は、太陽光発電の制御装置や現地に設置された日射量計などのセンサーから得られるデータで発電量を測定し、蓄電池やEV車両が蓄積している電力量を管理し、事業所が利用する電力需要を常時モニターしています。これらのデータをクラウド側に構築されたシステムに集積してAIで判断を行い、電源装置の充放電や事業所設備の電力使用量の調整などを制御します。
アムニモ製品の役割
R.E.A.L. New Energy Platform®ではアムニモのエッジゲートウェイAG10のUbuntu OS上に実装されたアプリケーションとクラウドシステムが連携することにより、各所に設置された太陽光発電施設からクラウドに向けてのデータの送信と、蓄電池の充放電等のためのクラウドからの制御信号の伝送が行われます。下図がエッジゲートウェイAG10を中心とした現地側のIoTシステムの構成です。
太陽光発電の制御装置や蓄電池の制御装置そして日射量計などのセンサーがインターフェース変換機を介してエッジゲートウェイAG10に接続されています。そして、エッジゲートウェイAG10上で動作するアプリケーションが現地の測定データのクラウドへの送信と、クラウドからの制御信号の現地装置への伝達を行なっています。
このように各所に設置された設備との情報伝送を担うエッジゲートウェイAG10は、太陽光パネルやEVの充電スポットなどの付近に設置されています。
開発の苦労
システムを開発する際に最も苦労したことは、発電所1つあたりに接続される機器にばらつきがあったことです。例えば、各所に設置された装置から情報を出力するためのインターフェースは、場所によって異なります。そのため今回のシステムでは、エッジゲートウェイとセンサーの間にリモートI/Oを接続し、RS-485やアナログ(4-20mA)、パルスなどの信号をリモートI/Oで受け変換し、イーサネット経由でエッジゲートウェイAG10へ出力しています。
エッジゲートウェイAG10にカスタムアプリケーションを実装する開発については、行き詰った際にはアムニモからもスピーディーにサポートいただいたので、順調に進めることができました。
導入の効果
1.LTEのルーター機能とサーバー機能を1台で実現し、低コスト・高品質なシステムを実現
当初はルーターとサーバーを分けて製品を検討していましたが、バラバラに調達すると単価が高いのにも関わらず、堅牢性も落ちてしまいます。しかし、アムニモの「エッジゲートウェイAG10」は1台でこの2つの機能を実現することが分かりました。LTE通信をサポートしたルーターでありながら、十分なコンピューターリソースがあり、各センサーから集められたデータを集約し、クラウドに送信するというサーバー機能を動作させることができます。そのため、装置構成を簡略化し、低コスト・高品質なシステムを実現することができました。
2.高い汎用性と拡張性
弊社のカスタムアプリケーションをエッジ端末上で動かす際、Ubuntu OS上にプログラムが開発可能な「エッジゲートウェイAG10」は大変魅力的でした。デバイスの管理を含め、変化に対して柔軟に対応できる高い汎用性と拡張性が最大の魅力だと思います。
3.幅広い動作温度に対応
機器が設置される場所は防水ケースにより雨水が当たることはありませんが、屋外であるため、周辺温度は外気と同じように大きく変動する場所です。そのため、幅広い動作温度に対応して安定してアプリケーションを実行することが可能なアムニモの「エッジゲートウェイAG10」は、このような屋外用途に非常に適していると感じています。実際、-20~60℃まで低温と高温のどちらにも対応できるデバイスが必要でしたが、「エッジゲートウェイAG10」以外にほとんどありませんでした。
今後の展望
現在の稼働施設数は全国390か所(2022年7月現在)です。2024までに250MW、1500施設の契約を目指しています。初期投資が高額になりがちな風力発電やバイオマス発電と比べて、太陽光発電は比較的ニーズが高まっている分野です。R.E.A.L. New Energy Platform®のような分散型の発電管理システムはまだ市場に広がっていない新しいサービスであるため、業界の最先端として各事業者様のニーズを取り込んでいきたいと考えております。
また現在は、他社様のAIサービスをAI処理の部分で活用していますが、エッジでのAI処理も検討しています。アムニモでもエッジAI処理を実行可能な「AIエッジゲートウェイ」を開発中と耳にしているため、将来的には「AIエッジゲートウェイ」の活用も視野に入れたいと思っております。