マルチキャリアとは?用語から活用方法まで分かりやすく解説

マルチキャリアイメージ
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IoTやクラウドは企業にとって事業活動に欠かせない存在となっており、そのインフラとなる通信回線は年々重要性を増しています。その一方で、通信回線が途絶える通信障害が大きなリスクとなっています。このような通信障害を克服する方法として注目されている「マルチキャリア」について、その概要から活用方法まで幅広く解説します。

「マルチキャリア」の用語の定義

マルチキャリアには大きく2つの意味があります。1つ目が、主に通信技術に関する分野で使われる用語で、無線通信方式の1種です。この文脈において「マルチキャリア」は「周波数などの性質が異なる複数の電波(いわゆる搬送波)を利用して情報通信を行うこと」を指します。

もう一つの意味は、主にITビジネスの分野で使われる用語で、異なる通信事業者の運営する無線通信網や通信方式、周波数帯域を複数利用することを表します。国内では、NTTドコモ、ソフトバンク、auのいわゆる大手キャリアと呼ばれる通信事業者が存在していますが、例えばドコモとソフトバンク両方のモバイル回線を使うことができれば「マルチキャリア」と表現できます。本コラムではこちらの後者の意味の「マルチキャリア」について解説します。

マルチキャリア利用のために必要なもの

異なる通信事業者(キャリア)の回線を利用し、マルチキャリアを実現するにはいくつか必要なものがあります。

複数のSIMカード

異なる通信事業者と契約した複数のSIMカードを用意する必要があります。

マルチキャリア対応の通信端末

マルチキャリアに対応した通信端末も必要です。例えば、近年スマートフォンでも2つのSIMカードが利用できる機種も発売されています。

通信回線の切り替え機能

複数のSIMカードを使えても、必要に応じて回線を切り替える機能がなければマルチキャリアのメリットを享受できません。手動での変更はもちろんのこと、電波障害時につながる回線に自動で切り替える、あるいはより強い回線に自動で切り替えるなどの機能が求められます。

 

さらに、近年、SIMカード1枚でマルチキャリアを実現する技術も開発され、商用化に向けた動きが進んでいます。このようなSIMを活用すればSIMカード1枚で、専用の機器でなくてもマルチキャリアを利用できる可能性があります。今後も新しい情報に注目が必要です。

なぜ「マルチキャリア」が必要か?

マルチキャリアを実現するには準備が必要ですが、なぜこのようなマルチキャリアが求められているのでしょうか?マルチキャリアを活用する目的として大きく3つここではご紹介します。

通信障害への対策

近年、IoTの普及などによりキャリア回線は事業活動に不可欠な存在になりつつあります。ハードウェアやメモリ、電源周辺に関してバックアップとして冗長性を持たせるだけでなく、ネットワーク周辺に関して冗長性を確保する動きも広がっています。そのため、1つのキャリア回線が通信障害等で使えなくなった場合に備え、マルチキャリアを採用し冗長性を確保することは、通信障害への対策として非常に有効な手立てです。

設置可能な箇所を増やすため

各通信事業者は日本全国幅広く、キャリア回線の整備を行っていますが、山間部や地下街など、あるキャリアは使えても他のキャリアは使えないケースは多数存在し、現場に設置するまでその回線が使えるかどうか分からないことも多くあります。マルチキャリア対応であれば、その場所に適したキャリア回線の活用が可能で、比較的電波が届きにくい箇所でも安定的に通信を行うことができます。

より強い通信へ切り替えるため

同じ場所でも通信キャリアが異なると、回線速度が大きく変わってくるケースがあります。また、時間帯によっても回線速度が速いキャリアは変わってきます。すこしでも早く強い通信キャリアを自動で選択する機能があれば、通信速度の速さが求められる場合でもより快適に通信回線を利用できます。

「マルチキャリア」の利用シーン

マルチキャリアの機能が活躍するシーンとしては下記のような場面が挙げられます。

重要な施設の監視

水道施設や電力施設などの重要な施設を管理するために、キャリア回線が使われているケースは多々あります。監視が止まってはならない重要な施設の場合、通信障害や電波障害などの不測の事態に備え、モバイル回線にも冗長性を持たせることが重要で、マルチキャリアが採用されます。

僻地での遠隔監視

河川の監視や土砂の監視など、特に山間部など有線でのインターネット環境構築が難しい場所ではキャリア回線が積極的に使われています。一方で、こうした僻地では電波強度が問題となる場合や、設置場所が少し変わっただけで繋がるキャリア回線が変わることもあります。また、どのキャリアが使えるのか確認するにも手間がかかります。そのため、繋がるキャリア回線に自動で切り替えられるマルチキャリアが重宝されます。

移動体での通信

自動車やトラック、鉄道車両などの移動体は、移動に伴い刻々とつながるキャリア回線が変わってきます。自動で繋がる回線に切り替える機能があれば、どこにいても通信が安定し、安全な運転・運行を守ることができます。

ISDNの代替

銀行のATMなどで使われているISDNは、比較的安定した回線として会社内ネットワークのバックアップなどでも利用されていますが、2024年1月の提供終了が見込まれています。高い堅牢性が求められるISDNの置き換えとしてマルチキャリアを採用することで、冗長性を確保し、安定的な運用が可能となります。

コストを抑えたマルチキャリアの活用

マルチキャリア導入時の課題「コスト」

通信環境の安定運用に役立つマルチキャリアですが、最大の課題はコストです。まず、マルチキャリア対応の端末を利用する必要がありますが、通信モジュールが2つ以上内蔵されているケースなどで、端末の費用が高額になります。さらに、SIMカードを複数契約する必要があり、ランニングコストも高くなる傾向にあります。

コストを最小限に抑える機器・サービスの選定

しかし、近年こうした課題は少しずつ改善傾向にあります。まず、マルチキャリア対応端末の低価格化が進んでいます。特に通信モジュールを複数内蔵するのではなく、1つの通信モジュールに対し複数のSIMを切り替えて利用する端末であれば、比較的コストを抑えた導入が可能です。

それからランニングコストに関しても、従量課金の通信プランが誕生しており、使わない期間は無料で、使った分だけコストが発生するサービスなども各企業が展開しています。

このような製品・サービスを活用することで、コストを最小限に抑えてマルチキャリアを利用できます。

まとめ

本記事ではマルチキャリアの用語の意味から活用方法、課題まで幅広く解説しました。実際に利用するシーンをイメージしながら、マルチキャリアの活用が有効かどうか検討していただければと思います。

なお、アムニモではマルチキャリア対応のゲートウェイとIoTルーターを販売中です。エッジゲートウェイ(AG10)の場合、最大4枚のSIMカードを挿入可能で、マルチキャリアを利用できます。通信障害などで通信が途絶えた場合には、キャリア回線を自動的に切り替え、通信環境の安定構築を実現します。

また、各キャリアパートナー様との接続検証も行っており、大手キャリアからMVNO事業者まで幅広い通信事業者様のSIMを利用できます。

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